もなお人気があるバーモントキャスティングス薪ストーブ・アンコールについて、誕生から現在までその歴史を追ってみようと思う。
アンコールの歴史を語る上で決して忘れてはならないのが、やはり1975年に発売されたデファイアントの存在である。デファイアントこそ、フランクリンストーブを忠実に伝承した薪ストーブであろうと私は思う。
その歴史の始まりは、世界的オイルショックの時代に遡る。私の記憶では、幼少時代(今から50年ほど前)は、日本では一般家庭の暖房燃料として薪・炭・練炭が主流であった。それがしだいに学校などの施設にも石炭ストーブに代わって石油ストーブが使われだした。そして1960年代半ば頃からは一般家庭にも石油ストーブが流通し始め、それまで使用されていた薪や炭、練炭などはほとんど使用しなくなっていった。低価格で安定した供給が可能な石油は大変便利であり、あっというまに一般の家庭にも普及したのである。
ところが1974年、そして1975年に中東問題が引き金となり世界的に石油が高騰や、供給されにくくなったり限界のある化石燃料の使用に疑問の声も上がるようになった。アメリカでも同じように大規模なオイルショックが起こった。
1975年、雪深いバーモント州の町外れにある古い鋳物工場で一台の堂々たる薪ストーブ“デファイアント”が誕生。薪ストーブを鋼板で作ることもできたが、「やはり旧来からの優れた素材である鋳物製がいい。鋳物のストーブの暖かさは特別だし、耐久性に優れている。」との思いから鋳物製の素晴らしい薪ストーブが造られた。それは、気密性に優れ、一度の給薪で長時間連続燃焼しつづけるストーブであると同時に、古き良き時代へのノスタルジィである暖炉の楽しさと優美さを兼ね備えていた。